契約と寂しい気持ち

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 何度も私の名前を呼ぶ声に気付いて顔を上げると、ビルから聖壱さんが凄い速さで走って来ていて……そのまま飛びつくように私の事を強く抱きしめてきた。 「……心配するだろうが、この馬鹿!」  聖壱さんの呼吸がすごく荒い。多分オフィスからここまで、私のために全力疾走してきてくれたんだと思う。 「聖壱さん、メッセージを見たの?だったらどうして私の心配なんか……?」  あのメッセージを見たら、きっと聖壱さんは清々するんだろうと思ってた。私はこれまで聖壱さんの良い妻では無かったと思うから。 「香津美があんなメッセージを送ってきたのは、不安だったからなんだろう?もしかしてこのまま俺から離れて、どこかに行ってしまうんじゃないかって思ったんだ。」  そう言って聖壱さんは私を抱きしめる腕の力を強める。ひょっとして、私は聖壱さんに嫌われてはいなかったの? 「じゃあ、どうしてずっと私を避けて?」  私が聞くと聖壱さんはとても困った顔をした。だけどジッと聖壱さんを見つめる私の様子を見て、とうとう彼も諦めたようで…… 「……分かった。きちんと話すから、香津美ももう俺から離れようなんて考えるなよ?」  聖壱さんは少し乱暴に私の手首を掴んで、周りの目も気にせず私を社長室へと連れていった。  彼は平気な顔をしていたけれど、私は色んな人に見られてしまいとても恥ずかしかった。
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