契約と寂しい気持ち

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 社長室に着くと、聖壱さんは私をソファーに座らせる。さっき走って来たせいか、彼は少し額に汗をかいていて…… 「聖壱さん、心配かけてごめんなさい。」 「いや、俺も香津美のが不安がっているかもしれないと分かっていながら避けていた。本当にすまなかった。」  それでも私の方が悪かったと謝ると、聖壱さんは「気にするな」と言うだけで。  彼はなかなか肝心の話に入ろうとしない。ねえ、そこまでして私の事を放っておいた理由は何なの? 「聖壱さん、ちゃんと聞かせて欲しいの。」  聖壱さんの腕を掴んで、ジッと彼の瞳を見つめる。私の事をあんなに走って迎えに来るほど想っていてくれるのならば、ちゃんと理由を教えて欲しいの。 「俺の身内のゴタゴタにお前を巻き込むくらいなら、冷たい夫を演じて嫌われようと思ったんだ。」  そんな、今更嫌われようなんて狡いじゃないの。私の事を何度も「好きだ」とか「愛してる」なんて囁いていた気持ちは、それくらいで無かった事に出来る程度の物だったの?  思わず聖壱さんを睨むと、彼はまた困ったような顔をする。その顔をされると、怒りたくても怒れなくて…… 「だけど香津美からのメッセージを見たら、いてもたってもいられなくて……」  だからすぐに迎えに来てくれたんだ。聖壱さんはちゃんと私を好きなままでいてくれた。 「聖壱さんは私と離婚したくなかった、と?」 「当たり前だろ。分かってるくせに、わざと言わせようとするな。」  俺様なのに、少しだけ頬を赤らめる聖壱さんがちょっと可愛く見えてしまうの。
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