契約と夫の隠し事

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 聖壱さんは私の問いに小さく頷いた。もしお義父様の会社にそんな人がいるのだとすれば、その人たちはきっと…… 「そう、そいつ等は親父の会社の重役なんだ。しかもそういう事にだけ頭の回る古狐でな、俺も親父も簡単にどうこうすることが出来ないでいたんだ。」 「そんな……じゃあ聖壱さんはお義父様から頼まれて?」  SAYAMAカンパニーの社長であるお義父様が、手を焼いている事を聖壱さんが代わりにやらなくてはならないなんて…… 「ああ、俺と柚瑠木(ゆるぎ)は今その事について調査中なんだが、そのせいで香津美や月菜(つきな)さんを危険な身に合わせてしまうんじゃないかと危惧していたんだ。なあ、柚瑠木。」 「……そう、ですね。」  そうだったのね、だから聖壱さんは私から少しでも距離を取ろうとしていたんだわ。きっと柚瑠木さんも月菜さんのことを……そう思って柚瑠木さんを見つめると、不自然に顔を逸らされてしまった。  ……いったいどうして?でも今はその事を気にしている場合では無くて。 「俺と柚瑠木の調査で、その古狐たちが親父の会社の取引で不正を行っている事はわかっている。今は証拠を集めているんだが、奴らはなかなか尻尾を掴ませてくれない。」  そうでしょうね、話を聞いているとそう簡単に片付く話ではないように聞こえるもの。きっとその人たちも頭が切れるに違いない。 「だったらどうすれば……」 「彼らのしっぽを普通に掴むのは難しい……ですから、僕らは囮を使おうと思ったんです。」  それまであまり喋りに加わらなかった柚瑠木さんが口を開いた。でも囮っていったいどういう事なの?
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