契約と覚悟と意地と

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 それにしても彼らの言う「とても良いもの」って何かしらね。間違いなく聖壱さん達に関する事だとは思うけれど……  今の私は両サイドから男性に挟まれいる状態で、簡単には逃げられそうもない。今は大人しいふりをして、彼らについていくしかなさそうだわ。  あらかじめ用意されていたであろう車に乗せられると、小柄な女性が怯えた様子で座っていた。もしかしてこの人が柚瑠木(ゆるぎ)さんの奥さんの月菜(つきな)さん?  隣に座っている女性に話しかけたいけれど、今は我慢するしかない。彼女が青ざめて震えているのに、今はどうする事も出来なくて悔しい……  目的地が分からないように目隠しをされて、連れて行かれたのは古びたビルの一室だった。窓のカーテンは全てキッチリと閉められていて、外の景色は確認出来そうにない。 「素直についてきてくださって助かりましたよ。少しだけ私達のお手伝いをしていただければ、貴女達はすぐに帰してあげますから。」  そう言うと年配の男性は私達をソファーへと座らせた。怯えた様子の女性を見てニヤニヤ笑う男性が気に入らないわ……後で覚えていなさいよ。 「私達は大事な話があるので、少しここで大人しくしていてくださいね?」  男たちが別の部屋に移動したのを確認して、私は隣に座り震える女性に話しかけた。
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