蛍拾い

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 マナは袋を胸と背中に分けて掛けると、蛍拾いを始めた。  それは数年、数十年と掛かる仕事かもしれない。  どれだけあの御堂に注げばいいのかも分からない。    けれど心に迷いはなかった。  犯人の影がまた現れ、ちらちらとマナの行動を興味深そうに見つめている。  それを鬱陶しいと思いつつ、なぜか寛容に受け入れることが出来た。 「あんたも早く、あたしが何を拾っているのか分かるようになるといいね」  全ての人が目を開く時が来ればいい。  全ての人が救われる時が来ればいい。 『愛と感謝がなければ世界は崩壊すると言うことを、あまりにもみんな知らない』  今、現実の世界では、教会に起こった大惨事を伝えるニュースで溢れているだろう。  でも、教えたい。  祈りが無駄であったワケじゃない。  誠実な願いは、死してなお、途絶えることはない。  マナは一つ、また一つと蛍を拾った。  神々しい光を放つ蛍は、そのうちに自ら、マナの元に向かって飛び始めるということを彼女はまだ、知らない。 9d16d4b4-c3f3-49ab-b5b3-c8b42b30aa71                              《終わり》
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