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ばつんっ
引っ張った固いゴムが千切れるような音だった
男達の血が固まり始めて切れ味の悪くなった刃では
なかなか切れないようで
何度も同じ場所をカチャカチャとしていた
ジャキン・・・カチャカチャ・・・ジャキン・・・カチャカチャ・・・
「やめ・・・・・・たすけ・・・・・・おね・・が・・・い・・・・たす・・・」
驚く事に彼女はまだ生きていた
人体の不思議だな!こんなになってもまだ生きているし、助けを求めることが出来るんだ!
彼女のおかげで勉強になったぞ!
お父さんが彼女を真っ二つにし終わる頃には絶命していた
「これで光弘の可愛い和香ちゃんが帰ってくる!
動物好きな和香ちゃんは山の動物達に食べられる事に喜んでくれるだろうから、コレはこのまま置いて行ってあげよう!」
そういって真っ二つにした和香ちゃんの左半分と男達の陰部を茂みに投げ
右半分はその場に置いたまま
ハサミとロープを回収して2人で車に乗り込んだ
「お父さんは本当にヒーローだよ!悪を倒してくれる、僕の理想のお父さんだ!」
どうして被害者の和香ちゃんまでも罵り
倒してしまったのか
和香ちゃんを引き裂く時
何を言っていたのか
何故泣いていたのか
気になる事は沢山あった
でも良いんだ
お父さんはヒーローだ
お父さんは正しいんだ!!
それからは僕は、自分の気に入らないやつを煽り
手を出させてお父さんに報告するようになった
お父さんが全て倒してくれる
僕だけのヒーロー!
「お父さん!僕のムカ・・・僕を虐める先輩社員がいるんだ・・・助けて!」
「そうか!お父さんが倒してやろう!」
順調に周りの嫌な奴が減っていく
そう思うとまた出てくる嫌な奴
否、倒される様を見る事がある意味ストレス発散になっていた
今回は僕を叱った先輩社員
別にそこまでではないけれど、ちょっとムカついたからお父さんに倒してもらうんだ
そして僕の役に立ってもらう
正直、ニヤニヤが止まらない
「おいっ、坂本!これはなんの真似だ!」
真っ黒な木の椅子に縛られているムカつく先輩社員が僕に向かって怒鳴る
僕はもはや、そんな事はまったく気にならなかった
何人をここで倒したのだろうか
もう覚えていない
こびり付いた血が酸化して真っ黒になってしまった
異臭がする
お父さんが少し離れた場所でカチャカチャと武器を選んでいる
こいつには僕を叱った罪を償ってもらう!
お父さんはどんな残忍な殺し方をしてくれるのだろう
楽しみで仕方がない!
まだお父さんは武器を選んでいた
まだか・・・
まだか・・・?
いつもならもうとっくに始めているのに!
はやる気持ちを抑えきれなくなった僕は
ついお父さんを急かしてしまった
「お父さん!まだなの!?僕もう楽しみで待ちきれないよ・・・早くこいつを殺してよ!」
するとカチャカチャと鳴っていた音が止んだ
ついに決まったのだろうか!
お父さんはゆっくりこちらを向いた
「光弘・・・・・・なんてことだ・・・」
ゾワッ
僕を見る
お父さんの目が
いつも倒してきた
相手を
見る目と
同じだった
「え?おとうさ」
「楽しみだと・・・殺してだと・・・・・・光弘、いつからお前まで悪になってしまっていたんだ!」
「ちょ!ちょっと待ってお父さん!違うんだよ違う、楽しみなんてそんなっ・・・殺・・・早く倒して欲しくてつい。だから!」
お父さんは泣いていた
「光弘、お父さんは正義の味方だ!」
そう言うとお父さんは手に持っていたナタを振りかざし
ぼくの
あたまを
なたで
わった
「お・・・お・・・・・・おと・・・・・・」
もはや言葉にはならなかった
頭にナタが刺さったまま光弘はその場に倒れた
ピクピクと体は痙攣し
口からは真っ赤な泡がブクブクと溢れ出た
「ひっ!」
椅子に縛られていた先輩社員から小さく悲鳴があがる
「・・・光弘、これでお前も元の優しい光弘に戻ることが出来たんだな!良かった!お前の理想のお父さんになる為にこれからもお父さんは頑張るよ!」
お父さんはそう言って満面の笑みを浮かべ
先輩社員の方へ向きなおった
その手にはキリが握られていた
「さあ、次は君の番だよ。
お父さんは必ずこの世から悪を消してみせる!」
光弘の口元は笑っていた。
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