理想のお父さん

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理想のお父さん

僕の理想のお父さんは ヒーローみたいなお父さんです 「光弘を虐めるんじゃない!お父さんが許さないぞ!」 「ちょっと、まてよ!!虐めるって言ったってちょっと叩いただけじゃプギャッ!!」 お父さんは僕を叩いた斉藤くんの頭を叩き潰した 「光弘!もう大丈夫だ!悪者はお父さんがやっつけたからな!」 「お父さんありがとう!!僕これでもう怖くないよ!」 始まりは小さなことからだった 幼稚園の頃僕をからかって遊んでいた隣のまーくんにお父さんが注意した それからはまーくんと仲良く遊んだ 小学校に上がってからは頻繁にいじめられた いじめに気付いたお父さんが相手の保護者と小学校に抗議してくれた 低学年の頃はそれで解決していた 高学年になってくるといじめも陰湿になってきて発覚も遅くなった 気づいてお父さんが抗議しても逆上した子ども達に更に陰湿ないじめをうけた そして小学6年に上がった夏 お父さんは初めて人を殺した いじめを見かけたお父さんが急いで間に入ってくれた その時、ぶつかった拍子に誤って1人公園の池に落ちてしまった "遊泳禁止" と書かれた看板を見てしまったお父さんは 溺れる子どもを助けに入るのを躊躇してしまった その場にいた全員で沈んでいくのをただただ見守っていた いじめっ子達は怖くなってその場から逃げ出してしまった 僕とお父さんは溺れた子が見えなくなるのを確認してから家に帰った それからお父さんは悪を許さないヒーローになった 中学に上がるといじめは少し落ち着いた でもいじめがなくなることはなかった 主に陰口や物を隠すなどのいじめに切り替わっただけだった 「お父さん・・・また勇志くんに陰口を言われた。」 「そうか!ちょっとまってなさい!」 そう言うとお父さんは家を飛び出した そして1人の人間を脇に抱えて帰ってきた ロープで縛られ身動きが取れない状態で 口には何重にもガムテープを貼られていたのは 紛れもなく勇志くんだった 「光弘!この子が勇志くんであっているかい?」 「うん、そうだよ!そいつが僕の陰口ばかり言う勇志くんだよ!」 僕がそう叫ぶとお父さんは勇志くんの口を塞いでいたガムテープを勢いよく剥がし 勇志くんの唇を引っ張って いつの間にか持っていたハサミで 勇志くんの唇をチョキンと切り落とした 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあああ!」 と勇志くんの悲痛な叫び声が上がる 「た・・・たうけえっ!たっうけぇぇぇっ」 いくら叫んでも無駄だ 僕らの家は山の上にポツリとある一軒家だから オシッコを漏らして情けなく泣きながら 誰かに いや、僕に助けを求める勇志くんの姿は 見ているだけで滑稽だった 「ごぇんなさいっ・・・ごぇぇんなさぁぁぁあ!」 「何を言っているんだ勇志くん!まだ終わってないぞ! 陰口を言うような悪い舌も切ってしまわなくては!」 「いやらぁぁぁぁぁぁぁあ!ごぇんなさぁあいいい!」 ジャキンッ 「〜〜〜〜っ!!」 舌を切られた勇志くんは声にならない叫びをあげ そのまま気絶してしまった お父さんは勇志くんが出血多量で死んでしまわないように止血して介抱した 勇志くんが意識を取り戻した時には血は止まっていて 洗濯した服も乾ききっていた 「おはよう勇志くん!これで君の贖罪は終わったよ!お疲れ様!!君は善人になったんだ!」 勇志くんはまたお漏らししていたが そのまま走って出ていってしまった 「お、お父さん!捕まっちゃうよ?いいの!?」 「どうしてだい?お父さんは正しいことをしたんだ!捕まりはしないさ!」 僕はとても不安だった 後日 勇志くんが自殺したと担任から聞いた なんでも、山道で野犬に襲われ唇を喰いちぎられ 舌を噛みちぎられてしまい みるも無残な姿になり耐えきれず自死を選んだ "らしい" 本当に、お父さんは正しかったんだ!
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