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罪人よ、知るなかれ
戦況は、頗るよろしくない。
本来ならば数日で占拠された海岸沿いエリアを制圧できるはずだったのが、一週間ほとんど戦線が動いていない状態だった。
惑星国家ファラビア・テラ。国王直属の陸軍、戦地にほど近いサカンテシティに駐屯していたために駆り出されることになった俺は、苦い気持ちで地図と睨めっこをする羽目になる。
サカンテシティ近辺は治安も悪くないし、こちらの駐屯地に配属になったと聞いた時は、毎日酒でも飲んでまったり暮らせるとばかり思っていたのに。よりにもよってこの近辺に異星人の戦艦が墜落して、海岸沿いの街を占拠されることになるだなんてなんともついていない話である。
――大尉にまでなったってのに、小隊率いて敵地にぶっこむ羽目になるとは思ってもみなかったぜ。あーあ、これ絶対来週の休みが飛ぶコースだろ。次に女房の顔見られるのはいつになるんだか。
全銀河でも最強無敵と名高い軍事惑星、ファラビア・テラ。しかし最近は強行な侵略行為の数々が異星人達に非難を浴びていることもあってか、やられる前にやれと言わんばかりにちまちまと攻め込んでくる輩があとを経たないのだった。王都のオービタルシティ近辺に被害は出ていないが、辺境の農村や小さな街に異星人が乗り込んできて被害を齎すことが少なからずあるのである。
半年前はマウタウン、三ヶ月前と一ヶ月前にはナラリアムタウンの方でドンパチがあったと聞いている。この巨大惑星の包囲を掻い潜って惑星まで到達するのも凄い話だが、惑星に不時着してそのまま現地住民を盾に暴れ回ろうという気概が凄まじい。どの惑星であっても、ファラビア・テラの軍事力に適うはずもない。ましてや乗り込んできた少数のテロリストごときが、太刀打ちできる戦力であるとは到底思えないというのに。
何にせよ、そんな無謀極まりない異星人テロリスト達のおかげで、自分達軍人はほうぼうに駆り出され、大変迷惑している状況なのだった。特に今回のように、立地が整っており、相手の抵抗が想像以上に強かった場合は尚更である。
――今回の敵は、惑星クオリーネの住人だったよな。触手まみれのバケモノどもだ。人間の姿をしたやつを相手にしなくていいってのは気楽だが……ったく、あの惑星の住人ども、いつの間にこんなに優秀な武器揃えてやがったんだ。攻め込むのも一苦労だっつーの。
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