罪人よ、知るなかれ

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 温暖化や土壌汚染、水質汚染などの影響で、今やこの惑星ではまともな海や川と呼べるものが僅かばかりしか残っていない状態である。しかし、その僅かに残った海や川には、厳しい汚染環境に耐えた魚などの生物が残っており、同時に貴重な水資源になっているのも確かなことなのだった。汚染物質を除去し、飲み水として使う装置なども開発されているから尚更である。  最悪だったのはクオリーネ星人達が、そんな貴重な水資源である海に隣接した町を乗っ取ってしまったことだった。  外部との物資が絶たれても、この町は水資源を使っていくらでも自炊・自活ができる状況にある。元より雨が多い地域であるし、海と隣接しているので魚を取ることも可能。濾過装置も備わっているので、飲み水にも事足りている。かつて紛争に晒されたこともあって、町そのものに高い塀が備わっているのも大きな問題点だった。おかげで精鋭であるはずの陸軍のメンバーが、この一週間包囲したままじりじりと攻めあぐねている状況なのである。  塀の上から最新兵器で狙撃され、空からもドローンで見張られている状況。塀に近づくことさえままならない、というのが最大の問題であった。  当然、斥候一つ行うのも命懸けである。ブライアンが成功したのはひとえに、小柄な体格と素早さ、経験値を生かした高い隠蔽技術があってのことだろう。本来二人組で行うべき斥候にあえて一人で行かせたのもそのためである。 「残念ながら、連中は当面町に立て篭もり続ける気マンマンみたいですよ。このままじゃ、中に閉じ込められてる人質の安全が確保できませんし……何より、水資源を抑えられたままでは王都の水不足になるのは免れられません。山からの湧水だけでは到底足らないんですから。国王陛下にご不便をかけるわけにはいかないゆえ、一刻も早く町を奪還しなければならないかと」 「だよな……」  この町の装置で濾過された水や魚介類は、そのまま王都にも出荷されているのである。今や貴重になった魚などの食材は、王族貴族達の高級食材として高値で取引されているのだ。自分達は、王族という名の“神の使徒”によって守られて今日まで生き延びてきた民であると信じている。彼らに不便をかけさせるなど、断じてあってはならないこと。神への冒涜に等しい。なんとしても、早急にこの戦いを終わらせなければいけなかった。  最悪の場合、人質は見捨ててもいいとは言われている。貴族達は異星人テロリストに占拠される前にいち早く町を脱出し、残っているのはほぼほぼ中流階級以下の住民であるとされているからだ。
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