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この惑星では、王族貴族とそれ以外で、命の重さに天と地ほども差がある。それが当たり前の世界だ。一般庶民と他の惑星からの移民は、いざという時王族貴族のために命を捧げることも役目であると、それに殉ずるようにと法律で定められている。王族達の水と食事のためならば、彼らの命を見捨てるのもやむを得ないことであろう。
「しかし、塀の上に設置された機銃の位置は全て把握しました。ドローンを掻い潜る必要があるのは確かですが……機銃を一部でも破壊できれば、壁を壊すなり上るなりして突破することも可能と思われます」
そして、俺もブライアンも、それぞれ貴族の身分である。この身分は軍の中にあっても、時に軍の階級以上に重要視されるものなのだった。
ゆえに、このような提案が出るのは必定だろう。
「オルコック大尉。下級兵の中で、庶民出身の兵を数名突撃させましょう。機銃の場所さえわかっていれば、こちらのレーザーも充分当たります。迎え撃たれても、貴族でないのならなんら問題はないかと」
***
数名の下級兵の“尊い犠牲”のおかげで、俺達は無事町に侵入することに成功した。こちらの部隊は圧倒的に数が存在している。庶民出身の兵が数名死んだところで痛くも痒くもないのだ。彼らに機銃を命懸けで破壊させ、さらに遠隔操作ができない爆弾を壁際で爆破させて大穴をあける。あとは、そこから雪崩込むように侵入すればそれでいい。
白兵戦になれば、こちらには軍部で何度も表彰された腕前である俺もブライアンも、他にも数名一騎当千の実力を持った部下達も存在している。ゲリラ戦で負ける気は全くしなかった。
――しかし……。
ただ。俺は町に入った時点で、いくつもの疑問点に首を傾げることになるのである。
――妙だな。……クオリーネ星人の戦艦は街中に落ちたって話なのに、それらしい痕跡が全然見当たらない。いくらなんでも派手な墜落現場を、たった一ヶ月かそこらで修復しきるのは無理だと思うんだが。
それに、先ほどの機銃。突入する時ついでに弾を拾って調べてみたところ、この町に本来備わっていたとされていたものよりさらに最新式の“ファラビア・テラ製”の銃であるということがわかった。異星人どもは、一体どうやって横流し品を手に入れたのだろうか。
そもそも、よくよく考えればあの銃の遠隔操作ができるほどの知識を、前時代的な生活水準であるはずのクオリーネ星人達が身につけているというのも奇妙な話である。どうやら、異星人テロリストどもに入れ知恵をしたファラビア・テラの裏切り者がいるということらしい。
――粗方、王政に反対する下層階級のテロリストどもってところだろ。……クオリーネ星人達だけじゃなく、その黒幕もとっ捕まえないといけねーな。
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