罪人よ、知るなかれ

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 こちらも派手なことをしている、突入してきたことはすぐに相手にも知られた筈だ。俺はブライアンと共にすぐ様壁の穴から離れ、塀に沿って敵のアジトと思われる建物の近くまで走った。  白兵戦に長けた自分達が真っ先にテロリストの実行部隊を潰すことで、敵の戦力を安全に削ぐのが狙いである。最も、こちらはもはや人質の安全も考えてはいない。アジトらしきものを見つけたら爆弾を設置して、遠隔操作で爆破するやり方を取るので白兵戦にならない可能性も高いのだけども。 「ったく、どこのテロ組織が裏で糸引いてやがるんだか。……あ。もしかして爆弾で吹っ飛ばしちまったら、犯人とっ捕まえて尋問できなくなっちまうか?それはやべえな、どうするんだよ」 「これだけうまく籠城できてるような相手の黒幕が、そう簡単に死ぬとは思えませんけどね。……それよりも、オルコック大尉」 「なんだ」 「その、気になったことがあるんです」  建物の影に隠れて進みつつ、浮かない表情でブライアンが言う。 「塀の上に設置されていた、最新式の機銃なんですけど。あれ、二年前に作られたばっかりのモデルで……遠隔で敵を狙い打つの、かなりの技術が必要なんですよね。半年以上みっちり、訓練しないとほとんど使い物にならないって」  そういえば、と俺も思い出す。あの機銃の扱いは、自分も訓練の時に相当苦労した覚えがある。パワーも重要もあるので、手動でも自動でもしっかりバランスを安定させて撃たないと振り回されてしまい、とんでもない方向に弾が飛んで行くことになるのだ。実際、訓練中に何度か事故も起きていると聞いている。  ブライアンが言いたいことに気づき、俺は沈黙した。あの銃を扱えるようになるためには、プロフェッショナルにみっちり訓練を受けなければどうにもならないはずだということだ。つまり、横流し品を手に入れただけで、使える代物ではないということである。 「……訓練を受けてないテロリストや、クオリーネ星人にそう簡単に扱える代物じゃないってことか。だとすると……機銃の訓練をしっかり受けたような、国王陸軍所属の人間が裏にいるとでも?それを、政府は隠してるってのか?」  機銃に苦戦していることも、映像も本部に送っている。向こうが把握していないとは思えない。にも関わらず何も言ってこないということはつまり、何か本部が隠し事をしているからということなのだろうか。  確かに、こんなことを言ってはなんだが――軍上層部の古臭い隠蔽体質に、現場は迷惑させられることも少なくない。人質がいないと思ったらわんさかいて、結局彼らを目の前で見捨てることになった事件などは非常に胸糞悪い気分になったものである。  そんな例があったことを踏まえるなら、彼らが何かを隠していてもなんらおかしくはないと思えてしまうのだが。
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