3話

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 腹にはしっかり青痣が出来ていた。検査もしたが、とりあえず内臓は大丈夫とのこと。腰用に湿布をもらった。  野瀬はずっと側にいて、帰りも送ってくれて、更にはその日泊まっていった。俺は言われるままに大人しく寝て、目が覚めたのは次の日の昼頃。側には蜘蛛の巣だらけの俺のスマホと、最新式のスマホが使用可能状態で置いてあった。  その日は流石に店を休んで更に翌日、店を開けるとすぐにガクさん達三人と、町内会長が血相を変えてきた。 「大丈夫だったのか、畑くん!」 「あぁ、まぁ」  おっさん三人が必死に俺の安否を確認して、心配してくれて。なんか、有り難かった。 「実はよぉ、あいつら他の店にも来て暴れたらしくてな。警察に被害届出す事になったんだ」 「畑くん、アンタもやられたんだろ? 被害状況教えて欲しいんだ」  なるほど、それで町内会長が来たわけか。  俺は蹴られた腹の痣を見せて写真に撮ってもらい、念のために貰っておいた診断書も出した。蜘蛛の巣スマホと、財布の二万円。俺の話を聞いて、ガクさん達は更に青い顔をする。  知ってんのかな、この人達。あんたらが「京くん、京くん」と言って話し込む奴はもっとおっかないってこと。  ……そう、おっかないんだよ。  俺が家でへばった時、アイツはずっと起きてた。背中を向けていたから、寝たと思ったんだろう。凄い顔で一言「殺す」と呟いた。  あのチンピラが捨て台詞に言う「ぶっ殺す」とは訳が違う。あいつらのは覚悟のない売り言葉みたいなもんだ。精々弱い相手をボコって悦に浸る程度。  けど、こいつのは違う。こいつはやるんだ、覚悟もある。そういうのが呟く「殺す」は、十分現実になりえる。  大人になった、丸くなった、でも根っこは変わらない。身内と決めた人間に手を出されるのを何よりも嫌い、敵となれば徹底的に潰しにいく。そして、恨みとかを忘れない。  妙に心配になって、俺は新しいスマホをタップする。が、俺のメモリーには野瀬の番号が入っていない。そもそも交換していなかったのを、思いだした。  それでもあまり心配はしていなかった。またそのうち来るだろうと、楽観的に考えていた。  だが、あの日を境に野瀬はこなくなった。そして、あいつらもまた姿を消した。
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