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桃太郎、誕生
日もすっかり暮れた頃、爺さんは芝刈りから家に帰ってきた。
「婆さん、ただいま」
そう言って戸を開けるも返事がない。
明かりも点いていないので出かけているのかと思っていると、人の息遣いがするのに気が付いた。
よくよく目をこらすと、土間の奥に人影がうずくまっているのが見える。
「何だ。いるんじゃないか。どうしたんだ、こんな暗い中」
話しかけるが人影に反応はない。
よもや具合でも悪いのか、と一歩足を踏み出した。
戸口に立っていた爺さんが動いたので、外の月明かりが部屋の中に差し込む。すると、真っ黒だった人影の輪郭が浮き上がった。
人影は婆さんだった。
土間の隅にしゃがみ込んで肩を震わせている。じゅるじゅると汁をすする音と、それを飲み込む音が聞こえた。
どうやら何かを食べて居るようだ。
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