弐、

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 次に彼が気付いた時、満天の星空が視界に飛び込んだ。  あの野原だ。  大の字になって倒れていたらしい。起き上がれば、隣に同じく転がる源三郎の、息苦しそうな呼気が聞こえて来た。 「源三郎さん、」  一体何が。聞こうとした所で、力無く笑いながら彼は一言。 「……引っ張り出せたか。良かった」  どうやら、源三郎が何とかしてこの身を(うつつ)へ引き上げてくれたらしい。安心感がどっと身を支配したと同時、右腕がヅキンと脈打つ。見れば、其処には切り傷があるが、不思議と出血はしていない。 「上手く説得出来なんだな、」  源三郎が、言う。  仁は其れに苦笑気味に返した。 「……耳が、ありませんでした」 「耳が?」 「はい。故に、話にならなくて…… あの形代を、使いました」  ……そうか。と、源三郎は一言、返した。  星が、美しい。  今まであの異世界に居たとは考えられない程に、其れは仁の心を清めてくれた。  自身の其れを悔い改めさせんと瞬き、 「…… ひとつ、嘘をつきました」 「ん?」 「母は…… 餓死でした」  源三郎は、其れを追求しようとはしなかった。  暫し、二人は寝転んだまま、其の美しい紺碧の空を無言で眺めていた。
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