天国の父が遣わした男

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「オトナの恋」 最初に興味を持ったのは私の方だった。彼は今まで私の周りにいたどの男性とも違っていた。興味本位でどんどん近づいて来る私に、彼は困惑の色を隠さなかった。遠慮のない私と、いつも一歩引いた位置に立つ彼とでは、相容れることは皆無であるかのように見えた。しかし程なく、私達はある団体で一緒に仕事をするようになり、彼は少しずつ私に心を開く様になっていった。いつも元気で豪胆な感じだが、実のところ心臓に持病があり、不整脈も頻発するし、足も少し悪い、という私を目の当たりにした彼は、実に優しい瞬間を見せた。危ない道では手をつないでくれたり、出かける用事がある時には必ず車で迎えに来てくれたり、と。極めつけは持病を持つ私が、更にもうひとつ持病を持つことになった時だった。検査結果が出た日、私は「どうして私ばっかり」とガックリし、結果が分ったらすぐに連絡しろと言っていた彼にメールを打った。すると彼はたちまちネットで調べ「治らない病気じゃないよ、大丈夫」と病気の詳細をメールで送ってくれたのだが、それを読んでいる最中にも彼から電話の着信があった。「今どこ?まだ病院?」こんなにも心配してくれる彼の気持ちが嬉しくて、不覚にも座り込んで泣いてしまったのを昨日のことのように覚えている。 この感情がどういう類いのものであるか定かではないが、私達の間には何か「情」が通っていると確信している。「大好きだよ」「愛してる」と言う私に「あ、そう?」としか答えなかった彼だが、今では用事がなければ連絡もないし、もう数年会ってもいないが、私達の間の「情」はまだ繋がっていると信じている。そして、究極のオトナの恋とは「行ったり来たりの繰り返し」がずっと続くようでもあり、派手な打ち上げ花火より線香花火のようでもあり、消えそうで消えない蝋燭の灯火のようでもある、と思うのである。
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