現実逃避行

7/14
前へ
/14ページ
次へ
 宏之は家にいても家事も育児も手伝わなかった。次の仕事を探している様子もない。 貯金はどんどん減っていく。  ついに私の我慢も限界を迎えた。 何より、このままでは生活できなくなる。 「どうするつもりなの?」  いつものようにソファーに寝転がる宏之に私は聞いた。 私が働くのでも何でもいい。とにかく先の見通しが欲しかった。 「二人を幸せにする自信がない。別れて欲しい……」  宏之は言った。 幸せにして欲しいなんて、思ってもなかった。宏之に一人で頑張らせるつもりなど微塵もない。  私だってこの先、一人で幸平を育てていく自信なんてない……。  でも、宏之を追い込んだのが私かもしれないと思うと何も言えなかった。 何より、そんな宏之と一緒に生活していくこと自体、私には無理だった。  それからすぐに宏之は家を出ていった。荷物を整理して送ったのも私だった。  離婚届けを持って最後の荷物を取りに来たのは、お義母さんだった。 「あの子も辛かったんだから由希子さんもわかってあげてね」 お義母さんの口からは謝罪の言葉は一言もなかった。  それから私は幸平を連れて仕事を探した。数年のブランクと二歳の子連れの私には、再就職は厳しかった。  養育費のことも一応決めたけれど、宏之は一度も払ってくれていない。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加