8人が本棚に入れています
本棚に追加
イイ雰囲気だと思ってくれたのは僕だけではなかったらしい。
――あ、まずい。僕はどうすればいいのだろう。
自然と、意図せずに、目を閉じてしまう。
頭を真っ白にしているうちに、柔らかな感触。
風の音と、息遣い。
それしか聞こえなくなったような感覚。
周り?
――そんなモノは、もうどうだっていい。
何秒くらい経ったのだろうか。
離れていく、甘い香り。
僕は、どうだろうか。
制汗スプレーとかはしっかりとしたはずだけど、不快に思われてやしないだろうか。
頭の片隅ではきっちりと余韻に浸っているのに、背後では冷静に自分を見下ろしている自分がいるようだった。
もっと全力で浸れよ、とセルフツッコミをしてしまう。
またしばらく見つめ合っていると、彼女は微笑む。
本当に同い年なのかと思ってしまうくらいに、大人びた笑みだ。
「……ちょっと、レモンね」
よくよく見れば、微笑みというよりもほのかな苦笑いのような笑みで、彼女は小さく呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!