"Lemon"

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 イイ雰囲気だと思ってくれたのは僕だけではなかったらしい。  ――あ、まずい。僕はどうすればいいのだろう。  自然と、意図せずに、目を閉じてしまう。  頭を真っ白にしているうちに、柔らかな感触。  風の音と、息遣い。  それしか聞こえなくなったような感覚。  周り?  ――そんなモノは、もうどうだっていい。  何秒くらい経ったのだろうか。  離れていく、甘い香り。  僕は、どうだろうか。  制汗スプレーとかはしっかりとしたはずだけど、不快に思われてやしないだろうか。  頭の片隅ではきっちりと余韻に浸っているのに、背後では冷静に自分を見下ろしている自分がいるようだった。  もっと全力で浸れよ、とセルフツッコミをしてしまう。  またしばらく見つめ合っていると、彼女は微笑む。  本当に同い年なのかと思ってしまうくらいに、大人びた笑みだ。 「……ちょっと、レモンね」  よくよく見れば、微笑みというよりもほのかな苦笑いのような笑みで、彼女は小さく呟いた。
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