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"Media Naranja"
一週間後の部活終わり。
今日は丁度、付き合い始めて一ヶ月になる日だった。
この前と同じように夕陽色に染まった校舎は、少し幻想的な雰囲気もあった。
今度はきっと大丈夫。今こそ、リベンジの時――。
「お待たせっ」
ひとりそんなことを思っていると、丁度よく彼女がやってきた。
小走りに近付いてくる姿が嬉しい。
正面に来たタイミングに合わせて腕を広げて、そのまま彼女を抱きとめた。
「あっ……」
小さく声が漏れる。
ちょっと強すぎただろうか。
「……痛かった?」
「ちょっと、びっくりしただけだから」
「そう?」
「今までそんなことしてくれたことなかったじゃない?」
ほんのりと期待を込めているような視線を、やや下から受ける。
「だって、ほら。……今日で一ヶ月だし」
「……記念日にしか、してくれないってこと?」
「そ、そんなことないよっ」
「……よかった」
微笑み合う。
見つめ合う。
徐々に、吐息が絡み合う。
距離が縮まって、『0』になる。
お互いに目は閉じているはずだけど、見つめ合っているような気分になる。
一点で触れ合っているはずだけど、全身で感じ合うような雰囲気になった。
前回よりも、間違いなく濃密な時間だったはずだ。
身体を離して見た彼女の瞳は、少し潤んでいる様に見えた。
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