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そのまま彼女は僕の胸に身体を預けてきて、僕はそっと抱きしめることで応えた。
片方の腕は背中に、もう片方は腰あたりに。
彼女の両腕も僕の腰に回った。
「しっかり、調べてきたよ。言われたとおり」
「……そう」
くぐもった声に聞こえたのは、顔を押しつけているからなのだろうか。
「どう、だったかな」
「それを言わせるつもり?」
「……ごめん」
意地悪というよりもむしろ、道徳的にどうかと思う。
が、彼女は顔を押しつけたまま首を横に振った。
「少なくとも『不充分ではなかった』、とだけ」
照れ隠しするような言い方にしか僕には聞こえなくて、彼女を抱きしめる腕にちょっとだけ力が入ってしまう。
「……ありがとう」
「こちらこそ、ありがとう」
気遣いの出来る娘だけれど、割とクールに振る舞うことも多い彼女。
そんな彼女の甘えたような声は今までに聞いたことがない声で、ものすごく心臓が高鳴った。
「でも、熟れてきすぎるのも寂しいかも」
「それ、どういう意味さ」
「なんでもない。忘れて」
そう言って恥ずかしそうに笑う。
「キミ以外にキスする相手なんていないけど」
「……ばか」
腰に回された腕に力がこもった。
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