"Media Naranja"

2/4
前へ
/8ページ
次へ
 そのまま彼女は僕の胸に身体を預けてきて、僕はそっと抱きしめることで応えた。  片方の腕は背中に、もう片方は腰あたりに。  彼女の両腕も僕の腰に回った。 「しっかり、調べてきたよ。言われたとおり」 「……そう」  くぐもった声に聞こえたのは、顔を押しつけているからなのだろうか。 「どう、だったかな」 「それを言わせるつもり?」 「……ごめん」  意地悪というよりもむしろ、道徳的にどうかと思う。  が、彼女は顔を押しつけたまま首を横に振った。 「少なくとも『不充分ではなかった』、とだけ」  照れ隠しするような言い方にしか僕には聞こえなくて、彼女を抱きしめる腕にちょっとだけ力が入ってしまう。 「……ありがとう」 「こちらこそ、ありがとう」  気遣いの出来る娘だけれど、割とクールに振る舞うことも多い彼女。  そんな彼女の甘えたような声は今までに聞いたことがない声で、ものすごく心臓が高鳴った。 「でも、熟れてきすぎるのも寂しいかも」 「それ、どういう意味さ」 「なんでもない。忘れて」  そう言って恥ずかしそうに笑う。 「キミ以外にキスする相手なんていないけど」 「……ばか」  腰に回された腕に力がこもった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加