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変化は、朝起きてからすぐだった。
『・・・?何なん、これ?体がむちゃくちゃ熱い・・・。』
最初はただの風邪だと思ったけど、背中をゾクゾクと走る何かは甘い快感を引き起こし、胎の奥底が温泉に入った時みたいにじんわりとした熱を孕んでいるのが分かる。
そしてぼんやりとする頭の中を『嘉月のせーえきが欲しい』と過ぎった瞬間、風邪じゃなくて発情期になったんだと悟った。
『あー、やっぱりΩだったんだなぁ。』
もう1回バース検査を受けたらαになってないかと地味に期待していたけど、発情期なんて来てしまったら認めざるを得ない。
というか、番を持たないΩって発情期の時どうしてんだろ・・・?
学校の保健体育では処理の仕方なんて習わないし。
そんなことを考えていると。
ーコンコンッ。
ふいにドアをノックする音がした。
一瞬迎えに来ない俺を訝しんで嘉月が来たのかと思ったけど、『侑、入っていい?』という声で父さんが来たのだと分かる。
『どーぞ。』
『失礼しまーす。』
呑気な声と共に入ってきた父さん・・・侑季は、ベッドの住人と化した俺を見ると、苦笑いを浮かべながらベッド脇にある勉強机の椅子に座った。
『匂いはしとったんだけど、やっぱり発情期だったんだね。』
『え、分かるもんなん?』
『Ω同士でも分かるよ。・・・あ、灯璃さんは僕以外の発情期には反応しないって言っとったけど、万が一があったらダメだけぇ研究室に寝泊まりしてもらうことにしたで。』
『うわぁ。父さん大好きな親父を引き離すとか、俺後から殺されたりせん?』
『大丈夫だで?灯璃さん親バカだけぇ。・・・それに、発情期が大変なことくらい僕を見とった灯璃さんが分からんはずがないし。』
『それもそっか。』
『とりあえずまだ発情期の最初だから理性が残っとるけど、時間が経てば経つ程酷くなってくけぇ気を付けて。』
それで、と父さんは部屋に入ってきた時に脇に抱えていた小さいダンボールを俺に差し出すと、ニッコリ笑って爆弾を落とした。
『発情期が悪化した時のために、玩具を持って来といたで。』
『っ、はぁっ!?』
『新品だから気にせんで大丈夫だで?』
『いや、そこじゃないそこじゃないっ!!父さんは羞恥心とかないん!?』
『んー。羞恥心よりΩの先輩として侑を手助けしたいなって思いが強いけなぁ。まぁ使いたくなかったら使わんでいいで?』
『・・・もしもの時はツカワセテイタダキマス。』
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・いろんな補足説明・
侑萊の発情期について
→単純に寝てる間に抑制剤切れて突入してしまった
たぶん次回の発情期以降はきっちり日数管理して抑制剤服用する(と思われる)
方言(って言える・・・?)の“ん”の使い方
→だいたい2種類くらい
一緒に行けん?:一緒に行けない(でかけれない)?という疑問形・イントネーション的に“ん”が上がる感じ
一緒に行けん:一緒に行けない(でかけれない)という否定形・イントネーション的に“ん”が下がる感じ
他の方言の使い方と似たり寄ったりしてる部分も多々あると思いますが、一応うちのとこはこんな感じです
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