僕がポンコツαになりまして【嘉月 side】

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ゆーちゃんこと池田侑萊は、昔から人より1歩先を進んでる子だった。 勉強は2年先まで予習し終わってるし、運動は1回見たらたいてい出来る。 料理も母親(♂)である侑季さんに一通り仕込まれてるおかげで、僕が好きな家庭の味は自分の家の料理よりもゆーちゃんの料理の方になってしまった。 勉強と運動以外てんでダメな僕とは大違い。 そんないろいろと出来て性格もいいゆーちゃんだけど、1つだけ欠点がある。 それは・・・。 『池田君、ほんとにかっこいいでなぁ!!』 『だでな!?陸上やっとる時の短パンから見える脚の美しさ、マジやばいわ・・・!!』 自分に向けられる好意にほとんど気が付いてないということだ。 ゆーちゃんに向けられてる視線をなぜか僕に向けられてるって勘違いしてるし、自分の顔の良さをちょっと整ってるレベルにしか考えてない。 βやΩはともかく、意識が強くて中々恋愛に発展しないはずの“α”からも好意を寄せられてるんだから、ゆーちゃんはそろそろ自分に向けられる好意に気付くべきだと思う。 でないと変な人に襲われて・・・。 ーヅキンッ。 『胸が、痛い・・・。』 ここ最近、僕はおかしい。 ゆーちゃんのことを考える度、ヅキヅキと謎の痛みが胸を襲う。 数秒で治まるから病気ではないんだろうけど・・・何だかモヤモヤして気持ち悪い。 『はーぁ。もうすぐバース検査の再検査を受けるのに。』 勉強と運動は何もしなくても人並み以上に出来るから、たぶんαのまんまだと思うけど・・・。 料理が壊滅的に出来ないとか音痴程ではないけど歌うのがそんなに上手くないとか考えたら、何かαじゃない気もするんだよな・・・。 どうかαでありますように。 僕はこの時、自分のについてのほほんとし過ぎていたんだ。 αと診断されてるのに“Ω”の匂い(フェロモン)が感じられないことが、何を意味するのか。 それに気付かされたのは、運悪くバース検査の前日。 Ωの発情期(ヒート)に巻き込まれ、酷い吐き気に襲われた時だった。
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