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あの後、Ω専用のタクシーに電話して男の人を病院まで連れて行ってもらい、僕は僕でバース検査をして貰おうとしていた大きな病院に向かった。
1日早く来た僕に受付の人は驚いていたものの、僕があまりにも必死な顔をしていたのかすぐに診察室に通して貰えた。
『・・・発情期が起きない?』
『はい。先程Ωの発情期現場に居合わせたんですが、その時発情期が起きなくて・・・。それに、Ωの匂いを嗅いだら気持ち悪くなってしまったんです・・・。』
『まさか・・・!!』
先生は何かに気付いたのか、僕に血液検査を行うよう看護師さんに指示する。
看護師さんがテキパキと採血をした後、検査結果が出るまで待合椅子で待っておくようにと言われたため、廊下に置かれた革張りの長椅子に座って待つことにした。
・・・こんな時でも考えることはゆーちゃんのことで。
今頃部活が終わって帰ってる途中かな?なんて当たりをつけていると、ふと頭を悪い考えが過ぎった。
ゆーちゃんは完璧な“α”だから、もしも僕と同じようなことが起きたら発情期に負けてΩの項を噛んじゃうかもしれない、と。
白くて細い項を見れば、誰だって噛み付きたくなるもん。
・・・ゆーちゃんみたいな真っ白で細くて綺麗な項なんか、特に。
ーゴクンッ。
『山名さーん。入ってくださーい。』
『っ、はいっ!!』
僕、今何を考えてた?
看護師さんに呼ばれなかったら、きっと・・・。
ーーーカミタイ。
そう続けていたはず。
・・・ゾッとした。
ゆーちゃんはΩじゃなくて“α”なのに、そんなことを考える自分が恐ろしかった。
これじゃあまるで、僕がゆーちゃんを・・・。
『・・・名さん。山名さん。』
『っ、はい!!』
『落ち着いて聞いてください。山名さんの嗅覚・・・Ωの匂いを嗅ぎ取る器官に異常が見られました。山名さんの場合は匂いを嗅ぎ取る器官がβ並かそれ以下程度の発育しかしていなくて、日常ではΩの匂いを嗅ぎ取れず、発情期の際は嗅ぎ取れるものの相性が良くない限りは異臭と捉えてしまう可能性があります。』
『・・・つまり?』
『よっぽど相性が良い・・・例えば運命の番などでないと、山名さんはΩの発情期に当てられることはないでしょう。』
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