俺達が高校生になりまして

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桜の満開日を少し過ぎた、4月の初め。 中学時代に着ていた学ランのボタンだけを付け替えるという簡単な作業で出来た高校の制服に身を包み、通い慣れた道を通って山名家へと向かう。 両手には入学式に必要ないボストンバッグと甘いものが苦手な嘉月でも食べられる煎餅(ちょっとお高め)を持っているせいか、ここが通学路であろう高校生達にチラチラ見られた。 入学式には必要ないけど今から行く場所には必要なんだよ、この荷物。 だからチラチラ見ないでください切実に。 チラチラ攻撃に耐えながら何とか山名家に辿り着き、俺は先日貰った入学祝い(そういう意図で渡されたわけじゃない)の合鍵で扉を開ける。 見た目からは想像出来ない程寝汚い嘉月はインターフォンを押しても絶対に起きないため、合鍵を使って入った方が早いと判断したからだ。 ・・・別に同棲してるみたいだな、とか思ったわけじゃない。 『とりあえずどこの部屋使えばいいか分からんけぇリビングに荷物を置いとくとして。・・・嘉月起こさんと昼からの入学式に間に合わんか。』 現在時刻は10時20分。 入学式は13時開始だから、12時くらいにはここを出ないとな。 頭でそんな計算しながら2階の嘉月の部屋を目指して歩く。 ・・・山名家にはかなりの頻度で遊びに来てるのに“今日からここに住む”と考えただけで足が竦むのは、俺が嘉月に惚れてるからだろうか。 そうこうしている内に嘉月の部屋の前まで来てしまった。 念の為扉をノックするけど、当然ながら無反応。 ・・・これは覚悟を決めて行くしかないか。 ーガチャッ。 『おじゃましまーす・・・。』 白と黒でまとめられたシンプルな部屋の隅に、こんもりとした山が1つ。 規則正しく上下に動く山を見て、嘉月がまだまだ夢の中にいることを察した。 『おーい、嘉月ぃ・・・。』 フワフワの黒い布団を捲れば、良い夢を見てるのか幸せそうな顔で眠る嘉月が現れる。 ・・・うーわー邪魔したくない。 こんな幸せそうに眠るのを邪魔出来る人間とかいる? 俺には出来ない、はい解散!! 昼ご飯の準備を先にしてから起こそう。 そう思って嘉月に背を向けた、その瞬間。 ースリッ。 『っ!?えっ、な・・・っ!?』 プロテクター越しに項をなぞられ、ガクンと膝から力が抜けた。 そして床にへたりこんだ俺の首筋にかかる、熱い息。 ーカリッ。 寝惚けていたからか、甘噛み程度の感触がプロテクター越しに伝わって。 俺は束の間の快楽を強制的に与えられた。
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