俺達が高校生になりまして

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昼ご飯を食べてちょっとだけゆっくりした後、俺達はこれから3年間通うことになる県立高校・・・北高校へと向かう。 中学とは逆方向の通学路は何だか新鮮で、近所なのに違う場所のように見えるから不思議だ。 不審者みたいにキョロキョロと辺りを見回していると・・・。 『・・・ゆーちゃんは高校に入っても陸上続けるん?』 急に嘉月に話しかけられ、ちょっとだけ体が浮いた気がした。 人が警戒してない時にビビらすのは良くないと思うんだ、うん。 『入らんよ?嘉月は弓道続けるんだろ?』 『続けるけど・・・。もしかして家事全般ゆーちゃんにやってもらうから、部活する時間潰しちゃった?』 『あー、違う違う。元々高校まで続ける気はなかったけぇ。』 初めての発情期(ヒート)を迎えてから緩やかにタイムが落ちていったのを見て、ここら辺が潮時だと思っていた。 だから、無理に陸上部入って途中でやめるよりも最初から陸上部に入らない道を選んだだけ。 そこに嘉月は関係ない・・・んだけど。 Ωだとバレずに説明するにはどうしたらいいんだ、これ。 『何で?ゆーちゃんむちゃくちゃ速かったがよ?もしかして、僕が知らん()に怪我とかしたん!?』 『違う。・・・俺は勉強に集中したいだけ。大学に行きたいけ、今からしっかり勉強しとこっかなって。怪我も(なん)もしとらんよ。』 『そっか・・・。』 あっぶね。 それっぽい理由が言えて良かったわ・・・。 嘉月が根掘り葉掘り聞くようなタイプだったら、絶対変なこと言ってた気がする。 まぁ勉強に集中したかったのは本当だし、嘘は吐いてないからいっか。 『あっ、ゆーちゃん北高見えたで!!』 『本当だ。』 嘉月が指差した方を見れば、“県立北高等学校”と書かれた門とコンクリート製の校舎が(そび)え立っている。 木造ではないけれど、年季の入った校舎は意外と温かみがあって俺好みだ。 受験の時はじっくり見れなかったから、後で校舎内を探検しよう。 そう心に決めて人集りがある方・・・たぶんクラス分けが掲示されてる場所へ向かう。 『うちらの中学1クラスしかなかったけ、クラス分けとか新鮮だわ・・・。』 『だでなぁ。私んとこも1クラスだった!!』 『おっ、高校でも一緒か!!1年間よろしくな!!』 何かの部活の強豪校でもいろんな学科があるわけでもないため、この高校の9割くらいは地元民。 だからか、もう既にグループが作られていたり同じ話題で盛り上がっていた。 俺達の中学でここに来たのは9人だったから、たぶん誰かと一緒のクラスになれるはず。 ・・・そう、思っていたのだが。 『ゆ、ゆーちゃん・・・。』 『なんっで俺だけボッチなん!?いじめか!?』 7クラス中、3人が1組で嘉月を含めた3人が3組、俺だけ4組で残りは7組。 3人同じクラスなら1人くらい俺に寄越せよ。 (なん)かの陰謀か? 『ま、まぁ僕隣のクラスだけぇいつでも来ればいいが?』 『嘉月・・・。』 あぁ、神様。 今日も嘉月は優しい天使です。
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