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【嘉月 side】
今日は朝から運が悪かった。
弓道部の朝練中に弓弦が切れて練習がほとんど出来なかったり、体育の時間に靴紐が切れて転けかけたり。
挙句の果てには家庭科の授業終わりに誤って皿を割ってしまい、10分休憩を少し過ぎた辺りまで先生からの説教が続けれた。
・・・二度あることは三度あると言うし、もう何も起こらないだろう。
そんな甘い考えを抱きつつ、急いで教室に戻ろうとすると。
『あの、山名君。』
『先輩?どうされたんですか?』
第2校舎の近くで、弓道部のマネージャーをしている先輩に声をかけられた。
何か部活内のことで知らせることがあったんだろうか?と首を傾げると、先輩は悲しそうな顔をした。
『・・・やっぱり、君には届かないんだね。』
『?先輩、何を・・・っ!?』
ーガリッ。
先輩がポケットから取り出した白い錠剤を口に含んだ瞬間、ドロリとした甘い匂いが辺りに広がる。
喉奥を焼きそうなくらい甘ったるいそれが匂いだと気付くのに、そう時間はかからなかった。
『ごめ、んね。こ、うし、なきゃ、むり、や、り、こん、やく、さ、せら、れ、るの。は、じめ、て、は、すき、な、ひ、とが・・・!!』
気持ち悪さで動けなくなった僕に、先輩が近寄ってくる。
どんどん濃さを増す匂いで頭がクラクラしてきたけど、僕は逃げることなんて出来なかった。
・・・だって、僕が今ここで逃げたら先輩は他のαに無理矢理襲われてしまうかもしれない。
今までお世話になって来た人がそんな目に遭うのは、絶対に嫌だ。
『おね、がい。い、れて。』
『ダメです!!気を確かに!!』
『嘉月・・・。』
今1番聞きたくない声がして、思わず振り返ると・・・。
そこには青褪めた顔のゆーちゃんがいた。
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・補足説明・
先輩は何をしたかったの?
→卒業したら無理矢理αと婚約すると聞いてずっと好きだった嘉月に1度だけ抱いてもらいたい(あわよくば番になってもらいたい)ために常日頃から誘発匂いを出していたけれど、嘉月が特殊な体質だったから匂いに気付いて貰えず、焦って発情期促進剤を使って強制発情をしてしまう・・・という感じです
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