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発情期中の先輩と一緒にいる嘉月を見て、“嘉月は俺の運命の番だから近寄るな!!”という醜い嫉妬が心の奥底から湧き上がってきた。
さっきまで助けなきゃと言っていたくせに、嘉月が絡めば非道なことを考えてしまう自分に自嘲めいた笑みが零れる。
・・・まったく、俺はどこまで自分本位なんだ。
『ゆー、ちゃ。』
『嘉月、ちょっと待っとってな。・・・お久しぶりです、先輩。』
『い、けだ、く・・・っ!!なに、し、に、き、たのっ!!』
『決まってるじゃないですか。こんなところに発情期中のΩがいたら格好の餌食になってしまうので、助けに来ました。』
『っ。う、そ、つきっ!!ど、うせ、ぼく、の、じゃ、ま、しに、き、たん、で、しょ?・・・ほ、んと、は、お、m・・・。』
最後まで言わせる前に、ポケットから取り出した緊急抑制剤を先輩に突き刺す。
緊急抑制剤の副作用で眠ってしまった先輩を壁に凭れさせた後、被害者と言える嘉月の方を振り返った。
『嘉月、大丈夫か?発情期とか起きとらん?』
『それ、は大丈夫・・・。だけど、匂い、のせい、で気持ち、悪い・・・。』
『分かった。俺の友達がもうすぐ来るだろうから待っとって。俺は保健室の先生をy『やだ!!行かないで、ゆーちゃん!!』・・・でも、しんどいんだろ?』
『・・・今は、ゆーちゃんの傍にいたい。』
カタカタと微かに震える嘉月を見て、俺は保健室に行くことを断念した。
こうなったら蜜瓏に事情を話して、俺と嘉月が早退(と言っても残り1限だけど)することを先生に伝えてもらおう。
『ゆー、くんっ!!ご、めん、なぁっ!!おく、れたっ!!』
『蜜瓏、ごめん。ちょっと幼馴染が発情期にやられて体調崩しとるみたいだけぇ、俺と一緒に早退することにした。コイツ、今ご両親が海外におるけ。』
『そっ、か、分かっ、た。伝え、て、おく、けぇ!!』
若干荒い息の蜜瓏を置いていくのはちょっと罪悪感があるけど、今の俺の優先順位は嘉月だから心の中で謝りつつこの場から退散する。
未だに震えている嘉月の手を引きながら、俺達は自分達の教室へと向かった。
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