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教室から荷物を回収した後、俺達は手を繋いだまま山名家まで帰って来た。
嘉月は徐々に落ち着いてきているものの、まだ微かに震えているのが手越しに伝わって、俺は思わず嘉月を抱き締めてしまった。
・・・大丈夫だと、伝えたかっただけだった。
それが嘉月にどんな影響を与えるかなんて、俺は全く考えてなかったのだ。
『っ。ゆー、ちゃん。』
『ん?どうしたん?』
『ゆーちゃんの香水の匂い嗅いだら、何か身体が熱くなってきた・・・。』
はー、はー。という荒い息と理性が飛びかけている嘉月の表情で、嘉月が俺の匂いに反応していることを察した。
・・・抑制剤を飲んでいるから、油断してた。
俺はΩで嘉月はα。
ついさっきΩの発情期に直面してしまった嘉月が、匂いに敏感になっていたとしてもおかしくはなかったのに。
『か、づき。』
『ごめん、ゆーちゃん。嫌なら逃げて。』
・・・数秒後、俺達はどちらからともなく唇を重ね合わせた。
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