第八章・近代科学と錬金術

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 エナはテラス席の背もたれに寄り掛かって股を広げ、ゴーグルと聴診器付属のヘッドホンを装着したトーマの両肩に足を乗せ、唇を尖らせて鉄の下着を覗き込むトーマに挑発的な言葉を投げかけた。 「姉とは鍵穴が違うけど、本当に開けれるの?デリケートな鍵穴をキズ付けたり、壊したりしたら、貴方をレイプ犯に仕立てて訴えるからね」 「問題ないっすよ。オレに開けられない鍵はないんで」 「ふーん、とにかくお願いね。エナだって父に内緒で来たから、バレたらヤバいのよ」  トーマは鉄の平坦な部分に聴診器を当てて、ヘッドホンから聴こえる微妙な音に集中し、エナの戯言をシャットダウンする。 『金属生物錠……。前回は三角形の鍵穴だったが、今度は六角形かよ。ちと複雑で、潜り込むのに手間取るかもな』  鉄の下着の表面にはドルトンの原子記号が刻まれ、股の中央にライプニッツの四大元素を表す円型の図形と六角形の鍵穴があり、トーマは胸の十字架のペンダントを指で摘んで、鉄の下着の股間部の鍵穴に慎重に差し込む。  すると、十字架がイモムシに変形して、モゾモゾと鍵穴の奥へ潜り込んでゆく……。
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