初めての裏切り

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初めての裏切り

彼女は私に完璧を求めていた。 1ミリのミスも許されない完璧を。 私は子供の頃からずっと人の顔色伺って生きていた。 大人は泣かずに笑っている子供の私を褒めてくれる、 そうしてたら可愛いねって褒めてくれた。 それが子供の頃からなんとなく直感的にわかっていた。 父や母がダメだよ、星菜はいい子だからわかるよね、 ダメと言ったらだめなんだよ、わがまま言わなくていい子だね、 そう言われると私は自分の思いを一切口に出さない子供になった。 幼稚園のバスの中で仲良しだったちえちゃんが 男の子のだれだったか忘れたけど、 その男の子のカバンについた ミッキーのキーホルダーを盗んだところを見ていた、ただ呆然と。 その男の子がバスを降りる時に無いって気づいて、 前方のドア前で泣き叫んだのをよく覚えてる。 そしたら隣の席に座っていたちえちゃんが 「先生、星菜ちゃんが持ってる」そう大きな声で叫んだ。 その言葉で一斉にバスに乗っていた子供たちが私に盗んで罵声や、 悪口を浴びせてきた。 ちえちゃんは自分の手に握りしめたミッキーのキーホルダーを 私のカバンにしまった、周りにだれもいないのがわかってわざとやったのだ。 私は取っていないということを先生や周りの友人にも言ったけど だれも私を信じてくれなかった、 私の言葉に耳を傾けてくれる人はいなかった。 ちえちゃんは笑ってた、 「星菜ちゃん、ダメだよとったら可哀想だよ」そう言いながら。 私はバスを降りて母親がどうしたの? という問いかけに話そうとした瞬間 「一ノ瀬さん、ちょっと」そう先生が言って 母親にコソコソと何か話した瞬間私の方を見て鬼のような顔で一瞬だけ見た。 先生に何度も何度も頭を下げる母親を見たら 早く本当のことを言わないととそう思った。 幼稚園バスに先生が乗り込むと先生は苦笑いで 「また明日ね、星菜ちゃん」そう言って扉を閉めた。 バスの車内からはついさっきまでニコニコ話してた“友達達”が 軽蔑の眼差しで私を見ていた。 ちえちゃんだけが窓の向こう側で笑っていた。 もう、こんな辛い思いはしたくないと思った。 それと同時に母親の手を握ろうとつかんもうとした瞬間、 パーンと周りの音が聴こえなくなる程の音で私の顔を引っ叩いた。 鬼のような母の顔が怖くて涙も出なくて固まってしまった。 母親は、私の言葉や手を撮る前に先に歩き出してしまった。 なんとも言えない寂しさが子供ながらに先を歩く母親の背中をみて 涙が溢れた、信じてもらえなかった一番信じて欲しかった母親に。 ただそれだけだった信じれないなら、 私の言葉を母親として聞く耳を持って欲しかった。 でもそれを求めてはいけないんだ、 そう思いながら夕陽の綺麗な坂道を歩いた。 家に着いたらきっと、私の話を聞いてくれると思っていた、 そう思いながら家に入った。 「お母さん」私は母の手を取ろうとすると 「なんで人のもの取るの、そういう子供に育てた覚えない、 なんてバカな子なの」そう言いながらさっきよりも 大きな音で私の頬を往復で叩いた。 それが、最初の私への罰だった。
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