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昼から夜へと移るとき、空を青く照らしていた太陽は橙色に染め上げる夕焼けとなる。沈み、沈み、やがて暗闇となる時に、黄金に塗り上げられた月が、日によって様々な形として現れるだろう。
太陽と月には、一つの都市伝説があった。いや、ある種『占い』と言うべきものだろうか。
太陽と月は、コンマ数秒の時間の合間に限り、毎日重なる瞬間がある。どれだけの距離があろうと、本来目視では重なる筈もない位置にいようとも、自然と近付き重なるのだ。それは一定の時間ではなくバラバラの時間。ただし唯一の揺るがない絶対条件として、『昼から夜にかけての間』にのみ現れる。
毎日行われる一瞬の日食月食。陽月の重なり。それを見たものは、その日の眠りが快適になり、望む明晰夢を見られるという。
ただし睡眠時間が飛躍的に伸びてしまい、次の日の昼にまで及んでしまう。ただの寝坊だ、ただの熟睡だ。そんな風に笑われることもあったが、昼にまで及ぶ長期睡眠へとなってしまった者の大半が、その日に『太陽と月の重なる瞬間を見た』という。
科学的な確証はないオカルト的な現象だと認識はされているし、夢の内容を誰一人として覚えていないものの、寝起きの生まれ変わったかのような気持ち良さや、元々多少の悪さがあった死んだかのような性格の矯正などがあり、良い現象とされた。
───ああ神よ。昼を司りしヘーメラー、夜を司りしニュクス、夢を司りしオネイロス、原初の神から連なりし神々よ。神が司るモノから生まれるこの現象は、一体どんな意図を以って顕れているのだろうか?
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