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「なるほど……。そういうことだったんですか」
「何か知っていたら教えていただきたい。この辺りでドラゴンの噂を聞いたことはないだろうか?」
「ブルーノさん、お願いします!」
エディもそう言って彼に頼み込む。しかし、ブルーノは急に真剣な顔つきになり、黙り込んでしまった。何か――深く考えているようだ。しばらく沈黙は続いたが、やがて彼は口を開いた。
「……ここより北へ進むと、シラカンバの森を越えた山間部の先に、ある集落があります。ラダという村です」
「ラダ……」
「そこは、原住民が棲む古い村です。これはあくまで言い伝えですが、彼らはドラゴンの血を引いているのだと話す人もいます」
「何……! それは本当か――!」
「あくまで言い伝えですよ。信ぴょう性はありませんし、虹蛇族だという保証もない。しかも、昔はよくラダから鉱石を売る商人が行き来していたのですが、随分前に山道の途中で落石がありましてね、今は完全に塞がれてしまっているんです」
それを聞いて、エディはハッとする。これはさっきカリームから聞いた話と同じだ。エディは思わずオズウェルと顔を見合わせた。それを見てブルーノは訊ねる。
「もしかして……、もうラダの村の話をご存知でしたか?」
「うむ。先ほど、ドラゴニアの商人から聞いたばかりだ」
「そうでしたか……」
「ブルーノさん。落石があったのはいつ頃の事なんですか?」
「十数年前――くらいでしょうか。二十年は経っていませんが、ラダの村は、今や完全に孤立してしまいました。商人達の間では『閉ざされた村』とも呼ばれています。彼らは元々少数民族のようですし、孤立して長いですから、既に滅びてしまっている可能性もあります」
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