3.後 悔

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3.後 悔

 俺は転校の多い子どもだった。  幼少期から父の転勤のたびに各地を転々としていた。地元と呼べる場所もないし幼馴染もいない。転校するときに「手紙を書くよ」と言ってくれた子も、手紙に知らない名前や知らない話題が増えるにつれ、だんだんと手紙の返事の間隔が空きはじめる。交流が途絶える合図だ。こういうことが3度も4度も続くと、ガキんちょだって馬鹿ではないので、「人間関係なんて希薄なもの」と学んでしまう。格好つけて言えば――達観したのである。  繰り返される出会いと別れ。  繋がったと思ったらすぐに切れる。脆い糸。  頭では理解していても、心は追いつかなかった。だってガキんちょだから。登校途中に寄り道して遅刻して一緒に廊下に立たされたり、どんなに短い休み時間でも校庭に出てドッジボールしたり、新作のゲームを買ったからって一旦家にランドセルを投げ捨てたあとに再集合して遊んだり。思い出して余りあるほどの思い出がある。なのに。ただ学校が離れた。その瞬間から他人になってしまうなんて。そんなこと、あるかよ。  ――ある!  昔の俺よ。  人生にゃ、そんなこと往々にしてあるのだ。しょっちゅうある。それしかないと言っても過言ではない。
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