2.不 和

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2.不 和

 ささやかな広さのキャンプ場だ。目の届く範囲にバーベキュー場、東屋、屋外トイレがぽつぽつと建っている。奥には赤い屋根の建物が2棟並んでいるのが見える。あれが今夜宿泊するロッジか。広場のすぐ傍には川が流れている。隠れ家然としていて、いい雰囲気だ。  今はキャンプのオンシーズンで、どのキャンプ場も予約でいっぱい。小規模なサークルとはいえ秋キャンの参加者は総勢20名もいる。唯一予約が取れたのが、ここ秩父の小さなキャンプ場。その名も「ちちぶビレッジ」だった。  ホームページには定員は15名と記載されていたが、電話で問い合わせたところ狭くてもいいのなら宿泊するぶんには構わないという返事だったので、こちらに決めさせてもらったのだ。  俺とカッチが荷物をロッジに置くと、誰かがバーべキュー場からこちらに向かって大きく手を振っているのに気付いた。先輩だ。バーベキュー場にはすでに女子達が集合していた。その中央には、ポロシャツにジーンズというラフな格好の男性が立っている。 「私がこのキャンプ場の管理をしております、湯本(ゆのもと)です。あなたがグループの責任者さんですかね」  電話の声と同じだ。口髭が豊かで、筋肉とも脂肪ともつかないどっしりとした、森のくまさん然とした風貌。年齢不詳だが50代から60代前半位だと予想する。  俺は会釈をして「川西慧と――こっちは中山(なかやま)克己(かつみ)です。今日は定員オーバーなのに泊めてくださってありがとうございます」と挨拶をした。
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