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まったく問題ない。どうせシャワーを浴びて歯を磨いて布団に入るような正しい手順で眠りにつく人間などいやしないのだ。酒を片手に気絶するように眠る。朝、室内で目が覚めれば行儀がいい方だ。
「あぁ、そうだ。ロッジは禁煙なんです。くれぐれも煙草は外の東屋で吸うようにと周知しておいてください」
俺はカッチに目配せをした。俺は煙草を吸わないので、周知の役目は喫煙者のカッチに任せたい。
「吸うヤツらには俺が言っとくよ」とカッチが言った。
あっという間にキャンプ場を一周し終え、湯本さんが東屋のテーブルの上に地図を広げた。この辺りの観光マップのようだ。
「今いるところが、ここです」と指をさされた場所の周辺には、見事になんのマークも描かれていない。
「この辺、周りになにもないんですね」
つい、素直な感想が口をつく。
「ええ。ですから、夜も、多少騒いでもらっても大丈夫ですよ」と湯本さんは悪戯っぽく目配せした。
「それはありがたいです」
俺は心から言った。外で飲むとなれば、より一層解放的な気分になって騒ぎ出すことは間違いない。いつかのキャンプでは、騒ぎすぎて他のキャンプ客からお小言をいただいたこともあるのだ。苦情を入れられたとき謝る羽目になるのは代表だ。今なら、俺である。そんな事態はぜひご勘弁願いたい。
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