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「ここから少し歩くと近くの大きなキャンプ場に行けます。そちらには散策コースがありますから、もし退屈になったら歩いて行かれるといいかもしれません」
「俺達も使っていいんですか?」
「散策コースは一般開放されてますから大丈夫です。あとは……そうだな。周辺にコンビニはありませんので、足りないものがあるなら昼のうちに買いに行かれた方がいいですよ。夜は車道も真っ暗になりますからね。説明はこれくらいです。なにかご質問はありますか?」
俺は首を振った。
「あの」とカッチが口を開いた。
「入口の人形はなんスか?」
こういうときに、話の流れを無視してでも自分が興味のあることを主張できるのが、中山克己という男である。俺にはできない芸当だ。
「人形ですか?」と湯本さんも意表を突かれた様子だ。
「あぁ。あれ、お恥ずかしながら私の作品なんですよ」
「え? すごいっスね」
「ただの趣味ですがね」
少し照れくさそうに、彼は笑った。
「トーテムポールと呼ばれる、アメリカの先住民の伝統的な彫刻品を模して作ったんです。もしかして怖かったですか?」
否定できずに俺はただ苦笑した。
目玉が動いてこちらを見たような気がしました、とはとても言えない。
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