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本当は、あのまま水面を眺めながら先輩と話していたかったのに。隣を見れば、留美が嬉しそうに俺を見ている。後輩の相手をするのもサークルの代表の役目か……。
入口の近くでカッチが女子達に囲まれていた。派手な髪色も相まって、さながらファンをはべらかすバンドマンのようである。
留美達に連れられてきた俺に気付くと、カッチはあからさまに「はあ?」という顔で眉を歪めた。
「おいおい。慧、来ちゃったのかよ」
カッチが小声で俺を責める。ああ。わかってる。カッチとしては、俺と先輩のことはここに残しておくつもりだったのだろう。俺は、こっそりと肩を竦めて見せた。
はっはっは。その心遣いが沁みるよ。
だけどなにも聞かないでくれ。
自分の不甲斐なさは、俺が一番よくわかってるんだ……。はは……。
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