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「ほら。後発隊の車には大きい荷物が乗ってるんだぞ。男共は手伝ってやれよ」
「はぁーい」
後輩達は素直な返事をして、軽やかに車へと駆けていく。彼らを見送ってから、俺はため息をついた。
「……勘弁してくださいよ、先輩」
「つれないなぁ。いいじゃん、ハグくらい。外国じゃ挨拶じゃん」
先輩はからっと笑った。今日はめずらしくジーンズを履いて、足元はスニーカーだ。普段は大人っぽい格好をしている先輩のカジュアルな装いは新鮮で。正直、可愛い。
「ここは日本です。それに俺、今はサークルの代表なんですから。後輩にチャラい男だと思われたらやりにくいんですよ」
「いいや、そんなの建前だね。そのクールな態度は代表になる前から……というか、出会ったときからずーっと変わらないじゃない」
先輩は拗ねた様子で唇をつきだした。
付き合ってもないのにそんな態度をされて、どう返事しろと言うんだ。
「ほら。俺達も荷物を降ろしましょう」
「ん~。力仕事は男性諸君に任せた。あたしはロッジを見に行こう~っと」
「ちょっと、自分の荷物くらい持ちなさいって。……ったく」
俺の言葉など聞かずに、先輩は一目散に駆けて行ってしまう。まったく、自由奔放――というか我儘なんだから。出会ったときからまるで変わらない。
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