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『……美雪さ、話を盛ってないよね?』
「裕ちゃん酷い!信じられないかもしれないけど本当なんだから!」
『ごめん、ごめん。美雪を疑ってるわけじゃないけど、あまりにもドラマみたいで驚いた』
裕ちゃんの感想は仕方のないものだ。
私だって驚いたし参列者の中にも何かの企画ではないのかと声が上がっていたのだから。
『どうしてそんな事になったんだろう?』
私はベッドに座り直し、足の爪をそろそろ切らなきゃなと考えながら久米本君の話を思い出した。
「それは久米本君も分からないって言ってた。相手の〝かっちゃん〟て人の事も知らなかったみたいだよ」
花嫁の由里香も私の友達だけど、かっちゃんの話を聞いた事はなくて全く知らなかった。
「由里香は本当は結婚したくなかったのかな?仮にそうだとしても当日に逃げるのはあんまりだよね。せめてもっと前に言えば久米本君も自分の家族も傷が浅かったのに」
『言い出せなかったって事もあるんじゃない?』
爪切りを取りに行きたくて立ち上がったけど、裕ちゃんの言葉に引っ掛かったのでやめた。
相手は電話の向こう側なのに不機嫌全開で胡座をかいた私は、どっしり構えて裕ちゃんに尋ねる。
「裕ちゃんは、由里香派なのかな?」
『そうは言ってない』
「とっくに大人なんだから、して良いことと悪いことがあるのを分かってなきゃダメ。誓いのキス直前で他の男と逃げるなんて酷すぎる」
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