エピソード 1

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「それにしてもとんだ大赤字の挙式だったね」 「結婚式にならなかったんだから仕方ないけど、ご両家とも大変ね」 「金銭面でもだけど、新郎の久米本君が本当に気の毒だったよ。やっと結ばれたって喜んでたのに」 お食事会に新郎の姿はなかった。 花嫁と結ばれる直前に逃げられてしまい、余程ショックが大きかったのだと思う。 「逃げた二人はどこへ行ったんだろうね?私だったらなんとしても探し出して、精神的苦痛で慰謝料ぶん取ってやるよ!」 妹がお茶を飲みながら興奮気味に言う。 「損害賠償も請求できるんじゃない?」 大学生の時に少しだけ法律関係の講義をとっていた私は思い出しながら言う。 結婚式は中止になったけれど、式場への支払いはキャンセルができない。 式の準備のために時間もお金も沢山かかっている。 新郎側には慰謝料だけではなく被った被害への損害賠償を請求できる権利がある。 「絶対に見つけ出してガッポリいただくしかないよ!」 「お金だけで解決できることじゃないと思うけど、とにかく久米本さんが元気になってくれると良いわね」 母の言う通りだ。久米本君、すぐには無理でも元気になって欲しいな。 私は頷きながらお茶を飲んだ。
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