第3話『鳴のいる場所』

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   スクリーン上、笑う祭谷の顔。 ○帯屋町高校・女子寮・外観    門が有り『帯屋町高校・やまもも寮』の表札。    やってくる制服姿の坂東響紀(16)、若柳鳴(16)、山村沙羅(16)。それぞれリュックや鞄を掛けている。    坂東の手に請求書。 坂東「鳴、請求書に心当たりはないの?」 鳴「ぜんぜん」 沙羅「寮長さんに聞くしかないわね」    消防車が停まっている。 坂東「まさか火事?」    消防隊員が帰っていく。坂東が慌てて走る。 ○同・中庭    一〇一号室のベランダの前に立つ坂東、鳴、沙羅。    部屋の窓が開け放たれて、室内は水浸し。 坂東「なんだ。ただの水漏れか」 沙羅「響紀、ここって……」 鳴「私の部屋だ」 坂東「鳴、何があったか思い出せる?」    鳴、少し考える。 鳴「そういえば今朝……」 ○(鳴の回想)鳴の部屋(朝)    衣類やゴミが乱雑に広がった部屋。    玄関で靴を履く制服姿の鳴。    鳴、部屋を出ようとして何かに気付く。 鳴「あっ。ラジカセ」    天井にむき出しになった配管。配管に引っ掛けられたラジカセとその電源ケーブル。    ラジカセを引っ張る鳴。ケーブルが配管に絡まり取れない。 鳴「何で取れないのよ!」    と強引に引っ張る鳴。    急にほどけ転倒する鳴。    配管の隙間から漏れてくる水。 鳴「(ハッとして)学校行かなきゃ」    鳴、ラジカセと鞄を手に部屋を出て行く。    配管の水漏れの勢い、突然激しくなる。 ○もとの中庭    ベランダの前に立つ坂東、鳴、沙羅。 沙羅「じゃあ、請求書は……」 坂東「水浸しになった部屋の美装費、かな」    坂東の背後に近づく神酒谷の革靴。 神酒谷の声「坂東響紀だな」    ふり返る坂東。スーツ姿の神酒谷が立っている。 神酒谷「梅の路演舞場の支配者。神酒谷消吾だ」 坂東「振攻会? なんでここに!」 神酒谷「私には別の肩書きがあってな」    と坂東に名刺を渡す神酒谷。    名刺に『土佐行政特別区ガス水道消防事業部長 神酒谷消吾』の文字。
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