第3話『鳴のいる場所』

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布由子「洗濯物乾かして畳んでおいたからね」    布由子が鳴に包みを渡す。 鳴「ありがとう」 布由子「それとこの踊り子衣装……」 布由子の表情が曇る。布由子、鳴に衣装を見せる。衣装に黒いカビが生えている。 布由子「カビが生えてた。すぐには落ちそうにないわ」 沙羅「ちゃんと、洗濯してたの?」    鳴、首を横に振る。 沙羅「じゃあ、仕方ないわね」    鳴、衣装を受け取る。と突然衣装をゴミ箱に捨てる。 沙羅「ちょっと! 何するの! 大切な衣装なんでしょ」 鳴「着られないなら、衣装なんていらない!」    と鳴が、早歩きで出て行く。 坂東「鳴!」    追いかける坂東。 ○同・玄関(夜)    鳴が急いで靴を履く。    追いつく坂東、沙羅、布由子。 坂東「どこに行くんだ」 鳴「倉庫に帰るの!」 布由子「泊まっていっても良いのよ。お家の方も心配でしょ」    鳴、顔をそむけたまま、 鳴「お邪魔しました」    と扉を開け、出て行く。    無言で見送る坂東、沙羅、布由子。 ○帯屋町高校・地方部倉庫・外観(夕)    西日が倉庫を照らしている。 ○同・地方部倉庫・内(夕)    つなぎ姿の坂東が床に仰向けになり、地方機OBI-1の整備をしている。    沙羅がトランペットを持ち、やってくる。    鳴のテントがあり、その入り口は開いたまま。 沙羅「あの子は?」 坂東「商店街。練習があるからって」    沙羅、ため息をつく。 坂東「倉庫の鍵は渡してあるから、大丈夫だよ」 沙羅「じゃあ、演舞の衣装はどうするのよ?」 坂東「鳴が踊ってくれれば、どんな格好でも構わないよ」    沙羅、いらいらした表情。 沙羅「甘い! 甘いよ、響紀は」    坂東、きょとんとした顔で沙羅を見つめる。 沙羅「分かった。私があの子を連れてくるから!」    早足で出て行く沙羅。 坂東「沙羅?」    沙羅を見送る坂東。 ○帯屋町商店街・歩道(夕)    歩行者天国のアーケード街。    シャッターの降りた店の前で踊る、ジャージ姿の鳴。    側のラジカセから音楽が流れている。
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