第3話『鳴のいる場所』

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○帯屋町商店街・歩道(夜)    鞄を掛け、走ってくる坂東。雑貨屋の前で立ち止まる。雑貨屋の一部、シャッターを降ろしている。 坂東「(息を切らして)間に合った」 祭谷の声「坂東君?」    祭谷龍馬(28)が坂東に近づく。 坂東「祭谷さん!」 祭谷「息を切らして、どうしたが?」 坂東「今日中に買いたいものがあって。(思い出し)そうだ」    坂東、鞄からチラシを取り出す。 坂東「明日の演舞。これチラシです」    坂東からチラシを受け取る坂東。 祭谷「ありがとうね」 坂東「それじゃあ」    と坂東が雑貨屋に入っていく。    祭谷、チラシに目を移す。 祭谷「なになに、梅の路演舞……。(何かに気付き)おお、こりゃあすごい!」    祭谷、目を見開く。 ○梅の路演舞場・外観    住宅街に囲まれた二車線の道路。道路は緩やかな曲線。両脇の歩道は観客で賑わっている。 ○同・歩道    小包を抱えやってくる祭谷。    中山(29)と岡田(29)が待っている。 中山「祭谷さん、今度は一体どこに?」 祭谷「これを買うてきた」    祭谷が小包から、独楽(こま)を取り出す。掌の上の独楽には、『おかめ』、『ひょっとこ』、『天狗』の絵。 岡田「独楽ですか?」 祭谷「これで楽しい遊びができるがやき」    岡田と中山が困ったように目を合わせる。    ×  ×  ×    道路の真ん中に立つ神酒谷とその地方機UMN-3。踊り子衣装の神酒谷、首に『おかめ』、『ひょっとこ』、『天狗』の杯を掛けている。UMN-3の頭には、同じく『おかめ』、『ひょっとこ』、『天狗』のお面が乗っている。    車道で対峙する坂東と鳴。その背後に地方機OBI-1。    歩道側には接待所(給水所)のテントがある。    歩道から見つめる沙羅と藤間修次(29)。周囲の大多数が大人の観客。 沙羅「先生、今日は大人が多くない?」 藤間「ああ、この演舞場では『あるもの』が振る舞われるからな」 沙羅「あるもの?」    坂東が鳴に近づく。 坂東「演舞の前に渡したいものがあるんだ」 鳴「何?」    坂東の手に花かんざし(髪飾り)。 鳴「花かんざし?」 坂東「衣装のお礼。鳴に似合うと思って」    笑顔になる鳴。
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