カグヤの名に懸けて(東京優駿)

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 シュバが第4コーナーに入ったとき、後続馬たちも勢いよく第3コーナーを駆けていた。その差は7馬身。シュバは目を細めたまま、ゆっくりとしたペースで走っている。  マンモスウォーリア、リトルマンモス、ウマナミジミー、ラ・コンテス・ド・ペルルが次々とシュバに向かっていく。  その彼らに、風が吹きつけた。 『のあ…!?』 『これは…!』  その風の中には、たっぷりとダートコースの砂粒が含まれていた。その砂利をもろに眼球に受けたマンモスウォーリアは目をつぶっている。再び開こうとしても涙が邪魔をして前を見られないようだ。そのペースは目に見えて落ちた。  先行馬の多くがペースダウンし、その影響を差し馬や追い込み馬も受けていく。何頭かが慌てた様子でコースの外側にはみ出した。  実はシュバが大逃げを打ったのは、この砂嵐の影響を考えてのものだった。彼は一人旅をしながら、その長いまつげを用いてダートコースから運ばれる砂粒を見事に回避している。新発田恵騎手もゴーグルの下で芝を睨みながら言った。 「ここからが肝心だよ」 『ああ!』
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