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作戦会議が終わると、シュバはドドドに話しかけた。
『そういえば父さん…お母さんは牧場で子育てかい?』
『それが…カグヤドリームは今年も身籠らなかった』
その歯切れの悪いセリフを聞くと、シュバとチャチャカグヤは困り顔のままお互いを見合った。
本来、ドドドのような種馬は、2月から5月くらいの間まで種付けで忙しいはずだ。特に去年長女のチャチャカグヤがG1レースを2勝もしているのだから、それでも種付けの仕事が来ないというのは異常事態である。
シュバは口では言わなかったが、ドドドが種馬失格の烙印を押されてしまったのではないかと心配しているようだ。どんな優秀な遺伝子を持っていても、種付けが上手くいかないのでは仕事にならない。
馬房に戻る際、シュバはそっと柿崎ツバメに話しかけた。
『父さんのお仕事…最近はどう?』
そう聞かれるとツバメも困った顔をした。普通の2歳馬なら誤魔化すこともできるが相手はシュバである。彼を欺くには綿密にストーリーを練らなければならない。
「上手くいっているとは言えないけど、お父さんは諦めるつもりはないみたい。当分の間はカグヤドリームと組んでもらうって言ってた」
その言葉を聞き、シュバは肩の力を抜いた。
『僕も、それなりには活躍しないと姉さんの躍進もただのまぐれって思われてしまうね』
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