桜花ステークスに向けて

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 たっぷりと汗を流したチャチャカグヤは、充実した様子で父や弟を眺めていた。 『これほど良い汗を流したのは久しぶりです』 『ああ、私も楽しいひと時を過ごせた』  楽し気な表情をするドドドを見て、シュバはまじめな顔で言った。 『ところで父さん』 『どうした?』 『クラシック戦の前…やっぱり緊張したでしょう。どうやって乗り越えた?』  そのシュバの質問には、チャチャカグヤも興味を示したようだ。是非、アドバイスをして欲しいという様子でドドドに視線を向けている。 『そうだな。確かに…緊張のし過ぎで眠れなかった』  ドドドの目は、遥か彼方にある建物を映した。 『これが正解なのかはわからんが…そういう場合は、厳しかった練習を思い出すことにしている。全力疾走して息を吸うのも辛くなるような、そんなハードな練習を思い出せば、自然と安心して眠ることができた』  シュバやチャチャカグヤはドドドの答えにとても満足したようだ。彼らはすぐに頷き、馬房へと戻っていく。  そして、その辛くも充実した日々は終わり、4月がやってきた。
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