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武田三四郎騎手の鞭が音を立てた。
チャチャカグヤはグングンと坂道を登っていく。サイレントローゼンも負けじと鞭うたれながら彼女を追った。3番手以降は既に10馬身近く離れている。実況も興奮した様子で叫んでいた。
「一騎打ちだね…」
『うん』
シュバの額からも汗が滴り落ちた。彼は落ち着きなく尻尾を揺らし、ドクドクと心音まで高鳴らせていた。
サイレントローゼンの粘りは想像以上だった。一息ついていたチャチャカグヤの表情には、まだ余裕があったが、サイレントローゼンは全身から汗を噴き出し、もはや限界が迫っているというのに、まだ食らいついてくる。
チャチャカグヤに食い下がったまま、彼女は最後の直線100メートルに躍り出た。
「何てタフなの!?」
『彼女は…本当に牝馬か!?』
予想以上のサイレントローゼンの粘りに、チャチャカグヤの表情からも余裕が消えた。更に脚運びを速めていたが、サイレントローゼンはそれにすらついてくる。
残り距離は、遂に50メートルまで迫っていた。
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