カグヤの名に懸けて(東京優駿)

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 新発田恵騎手が「シュバ君…」と心配した様子で声をかけると、シュバは大きく深呼吸をした。 『いや、それよりも今のレースに集中しないとね』  その言葉を聞いて恵騎手は安堵したようだ。冷静なシュバの力は他らなぬ彼女が一番よく理解している。  恵は、そっと耳元で囁いた。 「今日のレースの戦い方は、シュバ君にお任せするよ」  その言葉を聞きシュバは驚いた表情をした。 『…いいの?』 「うん、だってシュバ君、休みの日までずっと作戦を考えてたでしょ。だから私…サポートに徹することにしたの」  シュバは、その瞳を潤ませた。 『ありがとう。必ず…お姉さんをダービージョッキーにしてみせるよ!』  追い運動が終わると、18頭のダービー候補たちは次々とゲートへと歩みを進めた。
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