カグヤの名に懸けて(東京優駿)

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 今日の東京競馬場は曇りだが、風が強いためダートコースの砂粒が運ばれてくる。これがどうレースに影響を及ぼすのだろう。  シュバのたてがみが風になびくなか、着々と競技開始時間が近づいていた。  馬たちの心臓が高鳴る。騎手たちも固唾を呑んで、その始まりを待っている。東京競馬場の係員たちは1頭1頭、手慣れた様子で先導しながらゲートへと収めていた。  シュバの番が来た。彼はまるで古馬のように落ち着いた様子で歩みを進めていく。目的の場所に収まると、隣にはラ・コンテス・ド・ペルルの姿があった。  お互いの目が合うと、彼女の瞳は強い言葉を投げかけてきた。 ――シュバババババババ。アサルトインパクト記念の決着を、ここでつけましょう!  ペルルは本気のようだ。シュバとしても、こうなった以上はもう後には引けないのだろう。きっぱりと言い放つように睨み返した。 ――月一族(カグヤ)の名にかけて、全力で君と戦う!  2人の呼びかけに応えるように赤い旗が上がった。
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