無名の天才馬

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 シュバとチャチャカグヤが、茨城県の稲敷トレーニングセンターに戻ろうとした時、複数の記者が押し寄せてマイクを向けてきた。 「シュバ君! 先日の競技は見たかな?」 「君が前に馬券を買おうとした、ジェントルキャロトがお姉さんを破ったよね!? 君は今日の結果を予想していたのかい?」 「シュバ君、他に凄い馬はいる? 何でもいいから注目している馬は!?」  シュバはポカンとしていた。だから僕は人間の言葉は話せないよと言いたいのだろう。彼ら馬と意思の疎通ができる人間は少なく、実質的な馬主の柿崎ツバメ、騎手の武田三四郎と新発田恵くらいしか、今のところいない。  調教師の真丹木は、大きく息を吐くと記者たちの前に立った。 「質問なら書面で送ってください。後日改めて返答したいと思います」  その言葉だけでは、記者たちの興奮は収まらないようだ。まるでまくし立てるように複数の記者が質問を口にしながら、真丹木にマイクを向けた。 『まあ、予想外の出来事なんだけどね…』  馬運車の中でシュバがそう漏らすと、チャチャカグヤも困り顔になった。 『シュバでもわからないのでは、お手上げです』 『いやいや、僕がわかっていることなんて…本当に一握り、いや蹄の先についた砂粒程度のものだから、そんなに悟ったような顔しないで』
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