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 アースちゃんをよく見ると、股関節にあたる部分に溝がある。 「なるほどね~」  関節部を広い範囲で可動させることができるようだ。 「あ、倒れた!? ごめんアースちゃん、大丈夫?」  アースちゃんが私の手の中で転倒した。が、すぐに手との接着面を巧みに変形させて、自力で起き上がる。  そして不安定な足場で器用に片足立ちを決めた。  力士が大きなシコをとっているみたいだ。控え目に言って可愛い。 「偉い偉い! ほあ~、アースちゃんの体ってこんな風になってるんだね。もっと土っぽいのを想像していたけど、どっちかっていうと石や岩みたい」 「土を圧縮してるんだよ。圧縮すると水も通さなくなる。はは、アースもお前に会えてテンションあがってるみたいだな」 「にはは。この私にときめいたか? (うい)やつめ」  アースちゃんは片足で、今度は地につけた足の股関節から上をぐるぐると自転させ始めた。回転可動域は無制限のようだ。  上から眺めているとこっちの目が回りそうになる。 「ウチのはオーソドックスなタイプなんだ。貴金属を内包する奴とか、濡らすとベチャベチャになる砂っぽいのもいるけど、頑丈さならウチのが断トツだよ。その高さからなら落としても大丈夫なんだぜ」 「え!? そうなの?」  テニスコートのネットの高さほどある、加えてこの重量だ。  大丈夫と言われても、とてもじゃないがおいそれと落とす気になれない。砕けてしまわないものなのか。  賢治のことだ、デタラメで言っているわけじゃないんだろうけど。
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